皆さんは何か一つの曲を聴いて、「あ、この曲は××色だ」なんて思ったこと、ありますか?
私の場合、なじみのオーケストラ曲はたいてい”色つき”です。 でもそのほとんどは、理由のよくわからない色づけで、たとえばチャイコフスキーの交響曲5番は「青」、モーツァルトの25番は「金色」という具合です。 『英雄』→闘い→流血、という極めて短絡的な発想から、ベートーヴェンの交響曲第3番は「赤」、という例もありますが。
ではブラームスの交響曲は、というと、これらもはっきり”着色”されていて、第1番から順に、白、黄、赤、みずいろです。 これも、何気なく出来上がっていた配色のはずだったのですが、実は4曲に対して私が抱いている別のイメージと見事に対応していることに最近気づき、我ながら目の覚める思いでした。 というのも私には、ブラームスの第1番~第4番は、春夏秋冬という季節の流れにそのまま重なるように思えてならないのです。 まず第1番、これは春の訪れです。雪解けの1楽章で始まり、4楽章では新しい生命の誕生に対する喜びが爆発、といった感じでしょうか。 第2番はさわやかな初夏。冒頭の低弦は波の音で、ホルンのあとの高らかなフルートはきらめく太陽光線です。 第3番は木枯らしの吹きすさぶ晩秋。第4番は厳寒の冬です。そして先ほどの4色ですが、白は雪を、黄は輝く太陽を、赤は夕焼けと紅葉を、みずいろは透明な氷を象徴しているというわけです。
こんな風に一度覆いこむと、他にもどんどんこじつけができてしまうからおかしなものです。 例えば、第2番3楽章のオーボエのメロディーは大輪の向日葵(ひまわり)に思えてくるし、第4番の4楽章は変奏曲だから、似てはいるけれどもどれも少しず つ違う雪の結晶にも通じるな、なんて。 でも、これらのイメージは完全に私のひとりよがりなのは言われるまでもなく明らかで、その証拠に、第1番の雪解けは私の故郷に近い立山連峰のそれが想定さ れているし、第3番の2楽章を聴くと、夕暮れ時に私の田舎の田園地帯を赤とんぼが飛び交う光景が浮かんでくるのですから。 それに、ドイツ人のブラームスがこんなに日本的な季節感を持ち合わせていたとも思えませんし。 巷で言われている、第2番=「田園交響曲」というのと、私の「夏の海辺」といのも、なんだか大違いです。ただ2番に関しては、ブラームスが夏の避暑地の湖 畔でインスピレーションを得て作曲したことを知り、「あながち的外れではないかも」などと一人で喜んでいる私です。 でも、ひとつの曲をめぐってもさまざまな思い入れを持った人たちがいて、その人たちがそれぞれに集まってさまざまな演奏をするから、音楽って楽しいんじゃ ないでしょうか。
皆さんのブラームスは、何色ですか?